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2017年10月02日

第5回アジア太平洋ジオパークネットワーク(APGN)シンポジウムに参加してきました。

2年に一度、アジア太平洋地域のジオパークが一堂に会する、「第5回アジア太平洋ジオパークネットワーク(APGN)シンポジウム」に参加するため、9月17日~23日、中国の織金洞(ジジンドン)ユネスコ世界ジオパークに行ってきました。

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織金洞は、中国中南部の貴州省にある織金(ジジン)という街にあり、様似からは東京~北京~貴陽(貴州省の省都)を飛行機で乗り継ぎ、さらに貴陽からバスで2時間ほどかかりました。遠かった~!

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この一帯は、すべて石灰岩の大地となっていて、織金洞も巨大な鍾乳洞や石灰岩の渓谷が見どころのジオパークです。貴陽から織金に向かう車窓からは、上写真のような凸凹の山や谷が多くみられました。これらは、水に溶けやすい石灰岩が陥没や侵食によって形づくっている景色なのです。

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織金の街に入ると、シンポジウムを関係する巨大看板がいくつも掲げられていました。

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街の外れにある会議会場は、何十億円かけてこのシンポジウムに間に合わせたとか…。

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建物に入ると、ロビーにはAPGNメンバーのロゴマークがずらり!

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ちゃんと、アポイ岳のロゴもありました!

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大会前日には、全地域の代表からなる調整委員会の会議が行われ、APGNの新たなルールづくりや活動方針の決定、役員となる諮問委員、代表などが投票により選ばれました。代表となるコーディネーターは中国の、2人の副コーディネーターには日本と韓国の地質学者がそれぞれ選任されています。

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大会では、世界ジオパークのコアメンバーによる基調講演やテーマごとに分けられた事例発表、展示ブースにおける各ジオパークのPRと交流が行われました。上の写真は開会セレモニーの一コマ。

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世界ジオパークネットワーク協会会長のニコラス・ゾウロス氏による基調講演。現在、ユネスコ世界ジオパークは世界中に127地域(ヨーロッパ:70、アジア:50、南アメリカ:4、北アメリカ:2、アフリカ:1)にまで増えています。

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アポイ岳では、事例発表で町教育委員会のオオノさんがジオパークとアイヌ文化のコラボに関する発表を英語で行いました。

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また、各ジオパークでの展示ブースでは、日本から参加したジオパークの仲間たちと共同ブースを設置して、他のジオパーク地域との交流を図りました。

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現在、世界ジオパークに挑戦中の、タイのジオパーク関係者とともに…。

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大会期間中に行われた巡検では、巨大鍾乳洞の織金洞と織金渓谷を見学。年間数百万人が来場するという織金洞では、少数民族の方々の熱い歓迎を受けました。

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鍾乳洞の玄関には、中国のお寺の山門のように、博物館が整備されていました。

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中国のジオパークは、政府が全面的に整備していて、世界ジオパークになると国内から多くの観光客が見込まれることから、多額の資金を投入して観光地整備が図られています。

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館内では、この地域の大地の成り立ちをパネルや標本などで詳しく紹介されていました。

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鍾乳洞に入るゲート。入場料は確認しませんでしたが、数百万人の利用で、こうした設備や洞内の遊歩道整備が可能となっており、ジオパークによる経済循環が成り立ってるようです。

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鍾乳洞は、全長4㎞、高さは最大30mにも及ぶ巨大なもので、長い年月によってつくられた石筍がさまざまな自然の造形を作り出していました。

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特徴的な石筍には、その形をとってさまざまに名前が付けられていて、バックライトの看板で解説されていました。

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また、洞内は距離が長いことから、ところどころにはトイレも完備されていました。

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4㎞をヒーヒー言いながら踏破した出口では、ミニバスが待機していて、入口まで送り戻してくれるシステム。たしかに、もう歩いては戻れません…。

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また、石灰岩の巨大渓谷である織金渓谷も2㎞ほど歩かされて、正直スネが痛くなってしまいました。石灰岩は水に溶けやすいことから侵食に弱く、川の流れによってできたこうした渓谷も石灰岩の規模に比例して巨大なものとなります。中国のスケールの大きさに、びっくりです。

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この渓谷でも、こうした遊歩道がきちんと整備されていて、入込数の多さが想像されました。

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極めつけは、渓谷終点のこのエレベーター。高さ200mを一気に上がっていくのです。もはや、日本のジオパークは比較対象になりません。。。

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エレベーターを上がった先には、少数民族ミャオ族の集落がありました。もともと、ここで自給自足のような生活をしていたそうですが、最近になって住宅を改築し、集落そのものを観光施設化したとのこと。この日は、我々ジオパーク関係者を歓迎する歌や踊りが集落挙げて行われました。

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民族踊りでは、ジオパーク関係者も輪に入って踊り交流。私も見よう見まねで参加させてもらいました。ここは、ミャオ族の一集落にすぎませんが、ジオパークによって観光客が飛躍的に増えたことで、彼らの生活水準も大きく向上したらしく、こうした部分でも地域経済がジオパークによる観光効果で潤っている様を感じることができました。

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大会は、アジアのジオパークがさまざまに発表・交流して4日間の日程を終了。閉会セレモニーでは、次回(2019年)開催地となるインドネシアの代表者に、APGNの旗がバトンされました。

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今回、日本からはアポイ岳を含むユネスコ世界ジオパーク(UGG)のほか、UGGを目指す日本ジオパークのいくつかからも参加し、総勢、写真のような人数でした。

中国のジオパークを今回初めて体験させていただきましたが、同じジオパークながら日本とは比較が難しいと感じました。日本の10倍の面積と人口を誇る中国では、現在、日本の40~50年前にあったようなマスツーリズムが盛んになっています。しかも、その移動する人数は日本の10倍です。国家としてもジオパーク(国家地質公園)として、この織金洞(ジジンドン)のような雄大な資源をブランド化し整備することで、貧困地域の所得向上に生かすことはメリットがあるのでしょう。ただ、これがはたして持続的かといえば、???。観光では、インバウンドも含めて団体から個人へ移行している日本において、求められるジオパークの効能は何か?経済+教育?あらためてアポイ岳(様似町)の進むべき方向を考えさせられる今回の中国訪問でした。(タク)

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