5. ふるさとははるか南の海

サブテーマA:
かんらん岩から大地の変動を学び楽しむ

 丘陵地帯の北側(日高山脈側)には、小さいながらも「石灰岩」の露頭が点在しており、古くから採掘が行われています。石灰岩は、国内でまかなうことのできる数少ない工業原料で、日本各地でたくさんの鉱山が稼働しています。

 ところで、この石灰岩はどこから来たのでしょうか。実ははるか南方からなのです。ハワイはキラウェア火山の噴火などで有名ですが、ハワイ諸島の真下にはプレートを貫いてマグマを噴出するピンポイントがあります。これを「ホットスポット」といいます。ハワイ諸島は、この場所で7000万年以上も続いているホットスポットの火山活動で生まれたのです。

 ホットスポット上につくられた火山島のまわりには、やがてサンゴ礁が発達しますが、この殻などが海底に降り積もったものが石灰岩の原料です。これらは、太平洋プレートに乗って年に数㎝の速さで西に移動し、長い年月をかけて※日本にまでたどり着いたのです。ハワイからミッドウェー、カムチャツカまで一列につながるサンゴ礁や海山の列は、「ハワイ海山群」「天皇海山群」と呼ばれ、そのプレートの動きを示しています。また、石灰岩のほかに同じ海洋プレートに乗ってやってくるものに、「チャート」という岩石があります。これも石灰岩と同様、「放散虫」と呼ばれる生物の殻などが堆積したものです。

 これら、海洋プレートに運ばれてきた石灰岩やチャートが大陸プレートの下にもぐり込むとき、その表面の層がはぎとられて大陸プレート上に押し付けられたものが「付加体」です。付加体ができる海溝では、大陸側から流れ落ちてきた砂岩や泥岩とごちゃまぜになり層として連続しないばらばらの地層をつくります。これが「メランジュ」です。

 海洋プレートが沈み込む日本列島は、付加体によってその土台がつくられたと考えられており、アポイ岳ジオパークでは、それを特徴づけるメランジュの産状も見ることができます。

  • ハワイと日本との距離は約6,400km。太平洋プレートの移動速度は年間10㎝といわれていますので、ハワイのサンゴが石灰岩となって日本までに来るには、640,000,000÷10㎝/年=64,000,000年。つまり6,400万年という気の遠くなるような年月をかけて日本にやってきたことになります。ちなみに、アポイ岳ジオパークの石灰岩は、岩石中に含まれているコノドントの化石から、2億2000万年前にできたと考えられています。